【伊坂幸太郎】『死神の精度』あらすじ・感想【ネタバレなし】

こんにちは、サカキです!今回紹介するのは、伊坂幸太郎さんの『死神の精度』という作品です!
この作品は、100万部を越す大ベストセラーとなっています。
この記事では、次の3つについて説明していきます。
- 死神の特徴
- 構成
- ポイント
この記事は、『死神の精度』をまだ読んだことがない方も、すでに読んだという方も楽しめる内容になっています。
あらすじ
この作品を一言で表すと、ノートを使わずに人を殺せる死神が登場する短編小説集です。
では、この死神はリュークとはどんな違いがあるのか説明していきます。
この作品にメインで登場する死神は「千葉」という名前です。
千葉のファンは凄く多く、このことが『死神の精度』が人気である大きな理由の一つだと思います。
千葉の性格などは後ほど紹介します。
この作品に登場する死神は、決して殺した相手の残りの寿命をもらって生きているわけではありません。
千葉以外にも死神はおり、人間界にいる死神たちはある調査をしています。
その調査というのは、調査の対象に選ばれた人物の生死を決めるというものです。
調査期間は一週間で、その間に「可」もしくは「見送り」を記入した報告書を担当の部署に提出します。
「可」と判断された人は、調査後に事故など自然な形で死ぬことになります。
ほとんどが「可」と判断されるため、死神の調査対象に選ばれた時点で死ぬ可能性がかなり高いです。
死神は、調査対象者の死を見届けるまでが仕事になっています。
死神と聞いて、好き放題人を殺すのかと思った方もいるかもしれませんが、この小説に登場する死神は、仕事として淡々とこなしています。
実際、千葉は
「やるべきことはやるが、余計なことはやらない。仕事だからだ。」-本書p.12より
とモチベーションが高いワケではなく完全に仕事と割り切ってやっています。
続いて、メインで登場する死神 千葉の特徴を紹介します。
千葉の特徴
千葉には次のような特徴があります。
- 雨男
- クール
- 人とずれている
- 人間に興味がない
いつも冷静かつクールな千葉には女性ファンも多いはずです。
千葉が人とずれている点については後ほど紹介します。
続いて、『死神の精度』の構成を紹介します。
作品の構成
この作品は、6つの章で構成されています。
死神の精度
第1章の「死神の精度」では、死神千葉の性格や死神の仕事内容が説明されています。
死神と藤田
続いて、第2章の「死神と藤田」では、やくざが調査対象となっています。
吹雪に死神
第3章の「吹雪に死神」は、ホテルが舞台となっており、このホテルで千葉は連続殺人事件に巻き込まれます。
伊坂幸太郎さんが本格ミステリーに挑戦した作品です。
恋愛で死神
第4章の「恋愛で死神」はある女性に想いを寄せる男の物語です。千葉はなぜか調査対象者の恋愛が上手くいくように手助けするはめになります。
旅路で死神
第5章の「旅路で死神」は、殺人を犯して逃亡している男の物語です。
千葉が運転している時に、突然その男が乗り込んできます。
ここでは、死神と殺人犯との奇妙な会話に注目です。
ちなみに、この章に『重力ピエロ』に登場したレイプ魔の息子の春が登場します。
死神対老女
第6章の「死神対老女」は、第4章の「恋愛で死神」の未来を描いた物語です。
千葉は調査対象者の老女に人間でないことを見抜かれます。
死を受け入れた老女が、残り僅かとなった人生とどのように向き合うのかに注目です。
『死神の精度』は以上の6章で構成されています。
短編集なので、隙間時間にお手軽に読み進めることができます。
続いて、『死神の精度』を読むときのポイントを紹介します。
ポイント①千葉のキャラクター
まず1つ目は、なんと言っても千葉のキャラクターに注目です。
僕が思う千葉の魅力は「最強メンタル」にあると思います。
感情がほとんどないので、ヤクザや殺人犯を恐れることが全くありません。
焦ったりもしないし、将来に不安を感じることもありません。
感情さえなければもっと楽に生きられるのに、、、というのを実現させたのが千葉というキャラクターに思えます。
ある意味サイボーグとも言えるような完璧人間に見える千葉ですが、抜けているところもあります。
それは常識がないことです。
例えば、年貢の納め時と言ったヤクザに対して
「年貢制度は今もあるのか?」-本書p.52より
と訊いてしまったり
「どうして、人間は、人を殺すんだ?」-p.228より
とスプレーでカベに落書きをしている青年に訊いたりします。
この青年というのが、『重力ピエロ』に登場した春です。
千葉に質問をされた時の春の反応に注目してみてください。
完璧に見える千葉の抜けている部分も含めて千葉の魅力と言えます。
『死神の精度』のポイント2つ目は、死神の目を通して人間について考えさせられることです。
ポイント②人間について考えさせられる
この作品では死神という人間とは違う生き物を登場させることで、人間の変なところを浮き彫りにしています。
私は、『死神の精度』という作品が夏目漱石の『吾輩は猫である』に似ていると感じました。
『吾輩は猫である』は、猫の視点からその時代の知識人の生活や人間の愚かさを描いた作品になっています。
伊坂幸太郎さんは『死神の精度』を通して、一歩離れた視点で人間を描きたかったのかなと思います。
ここで千葉が語る人間論を一つ紹介します。
「人間というのは実に疑り深い。自分だけ馬鹿を見ることを非常に恐れていて、そのくせ騙されやすく、ほとほと救いようがない。もちろん、救う気もないが。」-p.14
確かにと頷いてしまうだけでなく、セリフもカッコいいです。
この作品が出版された8年後に『死神の浮力』という続編が出ています。
もし、『死神の精度』を読んで千葉のキャラクターが気に入ったら是非読んでみてください。
続編の『死神の浮力』は長編小説なので、読み応えがあります。
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