中村文則『最後の命』あらすじ・感想~殺人でしか快楽を得られない人がいる!?~
最後に会ってから七年。
ある事件がきっかけで疎遠になっていた幼馴染の冴木。
彼から「お前に会っておきたい」と唐突に連絡が入った。
しかしその直後、私の部屋で一人の女が死んでいるのが発見される。
疑われる私。部屋から検出される指紋。
それは「指名手配中の容疑者」である、冴木のものだと告げられ・・・
講談社文庫より
今回は、中村文則さんの『最後の命』という作品を紹介します!
人の性格を形成するもの
みなさん、自分の遺伝子は気に入っていますか?
人の性格は、「遺伝」が半分、「環境」が半分で形成されているようです。
努力では絶対に変えられない「遺伝」が半分も占めているのって、結構大きいですよね。
そして、残りの半分は「環境」ですが、みなさんの今いる「環境」は自分で選びましたか?
自分の性格は、自分では決められない!?
自分が今そこにいるのは、先生が言ったから、親に言われて、友達がいるから、、、なんて方も多いのではないですか?
自分の性格を形成する、「遺伝」と「環境」のうち、「遺伝」はどうにもならないにせよ、「環境」なら自分でコントロールできそうですよね?
けど、その「環境」も意外と自分で決めたのではなく、周りに流された結果ということはありませんか?
そう考えると、「遺伝」だけでなく「環境」も自分の意思で変えることってなかなか難しいですよね。
結果、自分の性格って、自分じゃ決められないってことですよね。
あなたにはどんな性癖がありますか?
ちょっと、エッチな話になりますが、みなさん、性癖はありますか?(/ω\)照
多かれ少なかれ、大なり小なり、変態なり変態じゃないなり、ありますよね?笑
人間だもの。変態でもいいじゃない。みつお
ちなみに、ないならいいんですけど、もし万が一ですよ、性癖があった場合、その性癖って自分で決めました?笑
よし、オレの性癖は幼女にきーめた♪ 幼女見たら興奮しよーっと♪
って人います??笑
いないですよね?私が聞いたことないだけじゃないですよね?笑
変態なのは、あなたのせいじゃない⁉
そうなんですよ。あなたのその性癖、あなたが変態なのはあなたが決めたんじゃないんです。
遺伝と環境によって、あなたは変態になったんです。つまり、親と周りの人が悪いってことですね。笑
よかったですね。あなたが変態なのは、あなたの性、じゃなくて、あなたのせいじゃないんです。
これで救われた人はたくさんいるんじゃないですか?笑
みんな中学生の時悩みましたよね?
こんなにエッチなことを考えるのは自分だけなんじゃないかと。
こんなに変態なのは自分だけなんじゃないかと。
クラスの可愛い子を見ると股間が熱くなり、慌ててブサイクな子の顔を見て、熱を冷ましたのは、私だけではないですよね。笑
そして、高校性になって、友達とエッチな話をすることで、変態なのは自分だけではないことに気づきますよね。
変態なのは、自分だけではないけど、変態である自分が嫌になることってありますよね。笑
けど、今日からはそんな罪悪感を感じなくて大丈夫です!
性格も性癖も自分では決められない!?
なぜなら、自分の性格は、親や周りの人によって形作られ、それに伴って、自分の性癖も同じように、親や周りの人によって決められるからです。
つまり、幼女にしか興奮しないあなたは全く悪くないってことです。
これを聞いた世界中のロリコンの歓声が聞こえてきそうです。笑
人を無理やり犯すことでしか快楽を得られない人とは
・・・・・・おふざけはここまでにして、今回紹介する中村文則の『最後の命』では、
人を無理やり犯すことでしか快楽を得られない人が出てきます。
人を無理やり犯すことは、どんな状況においても、決して許されることではないですよね。情状酌量の余地は全くありません。
けど、もしあなたが、そうすることでしか快楽を得られなかったとしたらどう思いますか?
普通のやり方では全く快感を得られないような人だったらと、考えてみてください。
最悪な気持ちになりますよね・・・・・・
快楽は得たいけど、快楽を得るためには、他の人を無理やり犯さないといけなかったら、犯罪者になるしかないですよね。
そして、先程も書きましたが、自分の性格とか性癖って、なかなか自分では決められないものです。
生まれてきて、気づいたら、自分には人と違った特殊な性癖があって、しかも犯罪につながってしまう類のものだったとしたら・・・・・・
人に危害を加えるは、絶対にダメですよ。ダメなんですけど、人に危害を加えないではいられない人にも、少し同情してしまう部分はありませんか?
中村文則はマイノリティの味方
中村文則さんは、加害者の立場で書かれているものが沢山あります。
これってなかなかできないことだと思います。
被害者の立場に立つこと、被害者を庇うことは、そんなに大変ではないですよね。
被害者が可哀そうなのは、あまりにも当たり前ですから、被害者の味方をするのは、容易ですよね。
一方で、加害者を悪く言うことも、わりかし簡単ですよね。
加害者さえいなければ被害者もいなかったはずですので、加害者=悪ですよね。
すごく単純で、わかりやすい論理ですよね。
けど、逆ってかなり難しいと思うんですよ。
被害者にも非があったと言えば、被害者の気持ちになれだとか、もし自分の家族が被害に合っていたとしても同じことが言えるのかだとか、被害者の悪口を言うとバッシングされかねないですよね。
そして、加害者にも同情の余地があるなど、加害者を庇うようなことを言えば、同様にバッシングされますよね。
なので、みんなにいい顔をしたいコメンテーターは絶対に被害者の悪口は言いませんし、加害者の味方をしたりもしませんね。
たまに、被害者に対して厳しいことを言う人もいますが、その時は会場の空気がピリッとしますね。
変なこと言ってんじゃないよ、と。
実に、日本らしいですね。
中村文則さんは、バッシングされることを覚悟で書いています。
実際に、中村文則さんの作品は賛否両論あるんですよ。
私みたいに、好きな人は本当に好きですし、嫌いな人は大っ嫌いと、両極端なんですね。
今回の、無理やり犯さないと快感を得られないという性癖を持った男のように、世間ではなかなか納得されづらいマイノリティを沢山書いています。
そして、加害者だけど、加害者には加害者なりの事情があって、しかもその事情も自分ではどうしようもないようなことだったりするんですよね。
加害者も被害者⁉
そしたら、加害者も被害者なのではないか、などと考えてしまいます。
加害者は、生まれた時から犯罪を起こすべくして起こし、加害者となってしまっているのではないかと。
こう考えたら加害者も可哀そうに思ってしまいますよね。
もし、あなたが殺人でしか快楽を得ることができなかったら
性犯罪だけでなくても、生まれながらにして、ずっと殺人衝動を抱えていて、ついに抑えきれなくなって、人を殺してしまった人も同じですよね。
もちろん、被害者のことを考えると、また、自分の家族が被害にあっていれば話は変わってきますが・・・・・・
生まれながらに、人を殺すことが決まっているというのは、なかなか残酷ですよね。
生まれながらに犯罪を犯すことが決められている人を、遺伝子のエラーとして、社会のエラーとして、法律で裁ばいて、取り除くことで一体何が変わるというのでしょうか?
と、中村文則さんに答えのない質問を投げかけられている気がします。
これは、一人一人が考えていかなければいけないことではないでしょうか?
加害者=悪と、単純に片づけていいものではないような気がします。
中村文則さんは、常に社会のマイノリティを、弱者を味方する作品を書いています。
そして、人間の悪や、狂気なところを書くことがすごく上手いです。
他の作家とは明らかに違ったテーマ、文体を楽しむことができるのは、中村文則さんの小説ならではですよ。
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