村田沙耶香と『コンビニ人間』
今回は、村田沙耶香さんの新作短編小説『信仰』のあらすじと感想を紹介します。
村田沙耶香さんと言えば、芥川賞を受賞した『コンビニ人間』で知った方も多いかと思います!
『コンビニ人間』の世界観は強烈でしたね!!
『コンビニ人間』を読んでいるときは、ずっと「普通ってなんだろう!?」って考えていました。
現代の純文学を読みたいけど何を読めばいいか分からないという方には、『コンビニ人間』をオススメします。
『コンビニ人間』については、以前に紹介しておりますので、詳しく知りたい方はこちら↓をどうぞ!
参考記事:村田沙耶香『コンビニ人間』
村田沙耶香の新作『信仰』(文学界2月号に掲載)
今回紹介する村田沙耶香さんの新作短編小説『信仰』は、文藝春秋が出版している『文学界』の2月号に掲載されました。
私は、村田沙耶香の新作が掲載されるということで、すぐにAmazonでポチリました!
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『信仰』あらすじ
まずは、『信仰』のあらすじを簡単に紹介します。
この物語の主人公 永岡は、「原価はいくら?」が口癖の「現実」を「信仰」している女性です。
永岡は、1万円もする化粧品やブランドのカバンなど、原価に見合っていないものを買う人の気持ちが全く理解できません。
実際の価値以上にお金を払っている人を不幸だと思っており、高額なものを買っている友達を見かけると「騙されてるよ!」「それ、ぼったくりだよ」と指摘していました。
会う人みんなを「現実」に「勧誘」することが使命だと思い、それがみんなの幸せになると信じて疑っていませんでした。
しかし、「現実」を押し付ける永岡にしびれを切らした友人から「私の大切な幻想を尊重せず、片っ端からぶち壊してくれてありがとう」と言われ、
また、永岡とは正反対で夢見がちな性格の妹からは、「お姉ちゃんの『現実』ってほとんどカルトだね」と言われてしまいました。
その日以来、永岡は自分とカルト宗教や悪徳業者との違いがよくわからなくなり、すっかり自分に自信をなくしてしまいました。
それからは、周りの友人に合わせて、高い服を身につけ、原価の20倍はするコーヒーを飲み、しまいには1回5万円もする鼻の穴のホワイトニングまでするようになりました。
しかし、「なんでこんなものにお金を」という気持ちは消えませんでした。
そんなある時、永岡は地元の同級生2人から「カルト」の誘いを受けました。
そのカルトとは、1回10万円の「天動説セラピー」でした。
それを聞いた永岡は「そんなの上手くいくはずがない!」と初めは拒否していました。
しかし、いつしか「現実」以外のものに「洗脳」されたいと願うようになり、サクラとして、そのセラピーに参加することになりました。
果たして、永岡は、洗脳されることができたのか、、、
気になる方は、続きを本誌でお読みください。
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『信仰』感想
続いて、『信仰』の感想について。
テーマ:普通ではない自分
読んですぐに感じたことは、「村田沙耶香節が炸裂してる!!!」でした。笑
冒頭で紹介した『コンビニ人間』でも『地球星人』でもそうですが、村田沙耶香さんの小説には、「普通とは違う自分に違和感を抱えている主人公」が多く登場します。
『地球星人』という小説を詳しく知りたい方はこちら↓
参考記事:村田沙耶香『地球星人』
それは、村田沙耶香さん自身が今までの人生で、「自分はどこか人とは違う」と感じてきたからだと思います。
「普通ではない自分」というのが村田沙耶香さんの小説における1つのテーマだと考えられます。
「善意」は「悪意」よりタチが悪い
今回の主人公は、「現実」を「信仰」しすぎている女性でした。
「原価の何倍もする物を買うと不幸になる」と信じており、それを口に出して言ってしまう人でした。
心の中に留めておけば揉め事にならないのに、と思ってしまいますが、揉め事にならなかったら小説としての面白みにかけてしまいますね。笑
本人は、人を幸せにするために善意のつもりで「現実」をみるように呼び掛けています。
しかし、周りからすると「夢を買っている」「幻想にも価値がある」と、聞く耳を持たず、結局、主人公の周りからは人が離れていってしまいました。
この「善意」というのがやっかいですよね。
相手が「良かれと思っている」からこそ、言いづらいことって沢山ありますよね。
もし、「悪意」であれば、こっちもそれなりの対応ができます。
しかし、「善意」だと相手に悪気がないから、無下にもできないし、、、ってなりますよね。笑
「善意」は「悪意」よりもタチが悪いと言えますね。
村田沙耶香は「普通」とは何かを知っている
村田沙耶香さんは、小説を読んで分かるように、明らかに普通とは違った思想を持っています。
しかし、「普通」とは何かを知っています。
どういうことかというと、村田沙耶香さんの小説の主人公は大抵「普通」ではありません。
では、村田沙耶香さんの小説には異常者ばかりが登場するかというと、そうではありません。
必ず「普通」な人が登場しています。
そして、その「普通」な人を描くのが上手い!
なぜか「普通」であるはずなのに、村田沙耶香が描くと滑稽に感じてしまう、なんてこともあります。
「異常」であることが「普通」なのではないかと錯覚してしまうほどに。
つまり、村田沙耶香さんは「普通」を知っているからこそ、自分は人と違っているということが分かっているのだと思います。
「普通」の人をよく観察しているということが、小説に滲み出ています。
村田沙耶香を初めて読むなら『コンビニ人間』よりも『信仰』がオススメ!?
もし、普段あまり本を読まない方で、まだ村田沙耶香さんを読んだことがない方は、『コンビニ人間』よりも先に『信仰』を読むことをオススメします。
その理由は、短くて読みやすいからです。
ページ数は下の画像が1ページで、これが23ページしかありません。
ー文學界2月号『信仰』より
なので、10分から20分程度で読むことができます。
また、ただ短いだけでなく、『信仰』には、村田沙耶香さんのエッセンスがぎっしりとつまっているので、もしこれが面白く感じたら、『コンビニ人間』も楽しめると思います。
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