【要約】中野信子『シャーデンフロイデ』~シャーデンフロイデの意味を心理学的に説明!~
こんにちは、池井榊です。
今回は、認知科学者である中野信子さんの『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』という本を紹介したいと思います。
シャーデンフロイデとは!?
みなさんは、「シャーデンフロイデ」という言葉は聞いたことがありますか?
私は、この本をきっけかけに知りました。
ちなみに、「シャーデンフロイデ」というのは、「誰かが失敗した時に思わず沸き起こってしまう喜びの感情」です。
あまり認めたくはないとは思いますが、人の失敗を喜んだ経験は誰もがあるのではないでしょうか?
他人の不幸で今日も飯が美味い、いわゆる「メシウマ」というやつです。
「他人の不幸はミツの味」と言う言葉を聞いたことがあるかと思いますが、人は、他の人の不幸を見ると快楽を感じる生き物です。
シャーデンフロイデの原因:オキシトシン (愛情ホルモン)
他人の不幸にミツの味を感じる感情が「シャーデンフロイデ」であり、それが起こる原因はオキシトシンというホルモンの影響であることが分かっています。
オキシトシンというのは、「愛情ホルモン」や「絆ホルモン」と呼ばれるもので、人と人の結びつきを強くする働きがあります。
具体的には、オキシトシンには次のような働きがあります。
- 血圧を下げる
- ストレス値を下げる
- リラックスする
- 肌のきめ、髪にツヤを出す
- 傷の治りを速くする
以上のように一見ポジティブな印象があるオキシトシンと、人の失敗に喜びを感じる「シャーデンフロイデ」にはどのような関係があるのかについて説明します。
実は、「愛情ホルモン」であるオキシトシンがバランスよく働いているうちは、先程紹介したような、好ましい影響があります。
しかし、オキシトシンの影響が強くなりすぎると、「愛情が憎しみ」へと変わってしまいます。
例えば、恋人との関係で「自分はこんなに好きなのに、相手はそっけない」とか「好きなのは自分だけなのではないか」と感じたことはないでしょうか。
このような強すぎる恋愛感情などは、オキシトシンのネガティブな側面であると言えます。
例えば、愛が深すぎたばっかりに悪の道へと走ってしまったNARUTOのキャラクターであるサスケやスターウォーズのダースベイダーなどは、オキシトシンが強く働きすぎていると考えられます。
ちなみに、「あなたのためを思って」とか「あなたを理解しているのは私だけ」などという最近流行りの「毒親」もオキシトシンが影響しています。
また、「知り合いに恋人ができた時」などに起る妬みの感情や、「知り合いが恋人と別れた時」「人気タレントの不倫発覚によって評判ガタ落ち」した時などに感じる後ろめたい感情もオキシトシンの影響であることが分かっています。
そして、オキシトシンによって生じる後ろめたい感情というのが、先程紹介した「シャーデンフロイデ」という人の不幸を喜ぶ感情となります。
まとめると、オキシトシンには、人との結びつきを強くするポジティブな働きがある一方で、妬みや憎しみなど「人の不幸を喜ぶ」ネガティブな面もあることが分かります。
以上の説明で、「シャーデンフロイデ」という人の不幸を喜ぶ感情は、オキシトシンのネガティブな働きが原因であることが理解できたと思います。
なぜ人は「他人の不幸を喜ぶ」のか?
では、なぜ人には、「他人の不幸を喜ぶ」という一見必要なさそうな感情が残っているのでしょうか。
もし、本当に必要がなければ、進化の過程で淘汰されるのが自然であると考えられます。
実は、この「シャーデンフロイデ」という感情が今まで受け継がれてきた理由は、「集団や社会を守る」働きがあるからです。
「人の不幸を喜ぶ感情」と「集団を守ること」にはどのような関係があるのかについて説明します。
先程、人気タレントが不倫発覚によって評判が下落するなど、得をしていた人が、みんなと同じ、もしくは、それよりも悪い状況になることで、人は快楽を感じることを説明しました。
このような感情は、個人の間でも起こりますが、集団の中でも同様に起こります。
そして、集団の中であると、ルールを守らない異分子を「排除」する働きがあります。
もし、ある集団の中で、決められたルールを守らない人が現れたら、その集団の存続が危うくなります。
例えば、不倫をする人がいて、それを野放しにしていると、周りで不倫をする人がどんどん増えてしまい、自分の婚約者がとられるリスクが高くなります。
なので、そうなる前に、出る杭に対して「制裁」を加えることで、ルールを守らない異分子を排除し、集団を守ることができます。
そして、人は、他の人に制裁を加えることに、快楽を感じるようになっています。
震災等が発生すると、それに伴って必ずと言っていい程に「不謹慎狩り」が起こります。
この「不謹慎狩り」という他人への制裁が起こるのも、制裁することによって快楽が得られるからです。
しかし、「不謹慎狩り」のように、人に制裁を加えることは、その人にとってリスクがあります。
そのリスクとは、「仕返し」されるリスクです。
誰かを恨んだ時、「何か仕返しをしなきゃ気がすまない」という感情が沸き起こった経験は誰もがあるかと思います。
以前に、警察であある部下が上司を銃で撃ち殺したということがニュースになっていましが、その理由は日頃の仕返しだったようです。
上司は、その部下のためという正義感をもって指導していたのかもしれませんが、部下からしたら腹立たしいだけであったのかもしれません。
このように、人に制裁を加えて恨みを買うというのは、ハイリスクでリターンがほとんどないことが分かります。
他者への「制裁」によって得をするのは誰!?
では、個人にとっては全く利益がない「不謹慎叩き」や「説教」などの「制裁」によって、誰が得をするのでしょうか?
それは、先程の話と繋がってきますが、制裁を加えた人が属する「集団」ということになります。
制裁が起こりやすい環境
続いて、制裁が起こりやすい時や場所、人に制裁を加えやすい人について説明します。
制裁が起こりやすい時:震災等
制裁が起こりやすいのは、先程紹介したように、災害など不謹慎というレッテルを貼りやすい時です。
制裁が起こりやすい場所:ルールのキビシイ集団
制裁が起こりやすい場所は、ルールのキビシイ集団です。
イジメを例に出すと、イジメによる自殺がよくニュースになることもあり、最近の学校では特に、イジメは絶対によくないと教育されているはずです。
しかし、イジメの禁止を呼びかけるだけではイジメがなくならないどころか、よりイジメが起こりやすくなると言わています。
それは、イジメが起こると、ルールを破ったイジメた人に対しては、制裁を加えても良いという暗黙の了解が生まれてしまうからです。
元イジメっ子がクラスで仲間はずれにされるなどのイジメを受けるケースはよくあると思います。
ちなみに、ルールの取り決めが多い夫婦ほど離婚しやすいということも分かっています。
制裁を加えやすい人:協調性の高い人
続いて、他の人に制裁を加えやすい人について説明します。
意外であるかと思いますが、実は「協調性の高い人」こそ、他の人に制裁を加えやすい傾向にあるようです。
なぜかと言うと、協調性の高い人というのは、集団の利益やフェアを重んじるため、それに反する人を許せず、自分が損をしてでも報復しようとするからです。
例えば、会社などでルールを守らない人に対して「組織のためになるなら、自分が嫌われてもいい」と人に説教をする人などが、これに当てはまります。
そして、このように人に制裁を加える正義感の強い人は、自分は良いことをしていると思い込み、快楽を感じています。
私は、この本を読む前は協調性の低い人こそ、人に制裁を加えたがるのかと思っていましたが、逆だったので驚きました。
よく考えてみると、協調性の低い人は、集団や他人への興味が低いので、わざわざ人に攻撃をすることなんてないことに気づきました。
協調性が高い人ほど人をイジメやすい!?
また、学校でよくイジメをしているのは、協調性が高く集団をつくりたがる人であることにも思い当たりました。
クラスで静かに本を読んでいるような人は、イジメられることはあっても人をイジメるところは見た事がありません。
私を含めて、今まで協調性が高いということに、ポジティブな印象しか持っていなかった方は少なくないかと思います。
協調性が高く、コミュニケーション能力が高くないといけないという風潮はありますが、それも考えものであることが分かりました。
中野信子さん『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』の紹介は以上です。
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コメント
はじめまして
マーイルマンと申します。
中野さんの本を分かりやすく解説されていたので、私のブログで紹介させて頂いてます。後だしでごめんなさい。そして、ありがとうございます。
マーイルマンさん
はじめまして!サカキと申します(^^)
ブログ読んでいただき、また紹介していただきありがとうございますm(_ _)m