【芥川賞】高橋 弘希『送り火』あらすじ・感想~イジメられっ子が1番憎む者とは~
みなさん、第159回芥川賞を受賞した高橋 弘希『送り火』は読みましたか?
私は、芥川賞を受賞した作品は、全部ではなく気になったものしか読んでいませんが、
『送り火』は受賞が決まると、すぐ読むことを決めました!
その理由は、2つあります!
1つ目は、高橋弘希さんの風貌です。
高橋弘希さんの個性的な風貌をみて、「この人の書く作品は面白いに違いない」と私の好奇心センサーがくすぐられたからです。笑
2つ目は、高橋弘希さんの『指の骨』という作品を私の好きな作家の1人である『教団X』でお馴染みの中村文則さんが絶賛していたからです。
自分が好きな作家がオススメする作品は、自分にも合う可能性が高いです。
また、自分の好きな作家の好みを知ることもできるので、読んで損はありません。
ではでは、前置はこの程度にして、作品の感想を書いていきたいと思います。
『送り火』あらすじ
転勤の多い 商社勤めの父を持つ主人公の歩(あゆむ)は、東京で1年半生活した後に、中学3年生へと学年が変わる時に津軽地方の「平川」という田舎の学校へ転校することなった。
歩の学年は男女合わせて12人であり、男子のグループの中心人物 晃(あきら)によるイジメが行われていた。
歩は、イジメの標的になっている稔(みのる)に対して同情していたが、助けはせず傍観しているだけであった。
イジメっ子の晃、イジメられっ子の稔の2人を含め級友とうまくやっているはずであった歩に降りかかった現実とは・・・
『送り火』感想
続いて、『送り火』の感想について紹介します!
子どもの頃のイジメを思い出す
みなさん、イジメを経験したことはありますか?
イジメは、加害者や被害者、あるいは傍観者として、誰もが経験したことあるのではないでしょうか?
人をイジメたこともないし、人にイジメられたこともないし、人がイジメられるのを見たこともないという人がいるとすれば、その人は、ものすごく幸運だと思います!
そんなユートピアみたいな世界で生きていきたいです。
私の場合、小学校と中学校でイジメがありました。
そして、私はイジメの加害者にも被害者にも傍観者にもなったことがあります。
私のクラスにはイジメっ子がいて、私は、そのイジメっ子にイジメられることが嫌で、一緒になって他の子をイジメたことがあります。
また、そのイジメっ子にイジメられたこともありましたし、他の子がイジメられているのを見て助けもせず、ただ傍観していたこともありました。
イジメの加害者・被害者・傍観者の全てを経験して感じたことは、そのどれもが辛いということでした。
イジメの加害者や傍観者では罪悪感を感じ、被害者では悔しさや腹立たしさを感じました。
そして、この3者の中で一番辛かったのは、自分がイジメの被害者になることでした。
イジメは良くないとわかっていながら、やっぱり自分が一番大事だったので、人にイジメられるくらいならイジメた方がマシだと思っていました。
今考えると本当に最低だったと思いますが、その時はそうすることしかできませんでした。
そして、その時どうすればよかったのかは、正直今でもよくわかりません。
イジメはなくなりませんし、本当に難しい問題だと思います。
私は、地元の小学校と中学校に通っていたのですが、その環境が嫌で高校は地元から離れました。
高校では、イジメというイジメがなく人間関係に悩むこともなくなり、とても快適に過ごせました。
小学校と中学校ではイジメがあり、なぜ高校ではイジメがなかった理由も上手く説明はできません。
最近は、仕事のことやこれからのことを考えてしまっていて、子どもの頃を振り返る機会がほとんどなかったのですが、『送り火』を読んで、久しぶりに子ども時代を振り返りました。
あまり気持ちのいいものではありませんでしたが、過去を振り返るというのもたまにはいいかもしれません。
イジメられっ子が1番憎む者とは
本編の内容にも関わることですが、『送り火』を読む前は、イジメられっ子は、自分をイジメた本人を1番憎むものだと思っていました。
しかし、『送り火』を読んだ後は、イジメられっ子は、自分をイジメる人を憎むのは当然ですが、それ以上に、助けもせずただ傍観していた人を憎むのだと思い知らされました。
確かに、私の経験に当てはめてみても、自分をイジメる人はものすごく嫌いでした。
助けもせず、知らぬ振りをしているクラスメイトや教師に対しての憎しみは相当なものであったことを思い出しました。
イジメは、イジメっ子とイジメられっ子の2人の問題ではなく、それを見ている人、その環境にいる人も当事者です。
イジメをやめさせるのはすごく大変なことだと思いますが、周りにいる人が何か行動を起こすと、現状よりもよくなるかもしれません。
イジメを見て見ぬ振りをしていると、イジメがなくなることはなく、いつ自分がイジメの標的になってもおかしくはない環境となってしまいます。
そして、イジメをただ傍観しているだけでは、自分がイジメられたとき、誰も助けてはくれません。
その環境にいるみんなが、「イジメが起こるような環境にしてはいけない」という意識を持つことが大事だと思います。
『送り火』を読んでイジメについて少しでも考える人が増えれば、この世界はほんの少しでもよくなるかもしれません。
より良い世界がくることを心より願っている今日この頃です。
併せて読みたい:他の芥川賞受賞作
【第160回芥川賞受賞】上田岳弘『ニムロッド』
【第155回芥川賞受賞】村田沙耶香『コンビニ人間』
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