【芥川龍之介】『鼻』あらすじ・感想┃内容を分かりやすく解説!
今回は、芥川龍之介の『鼻』という作品のあらすじ・感想、そして解釈を分かりやすく紹介します。
この記事の構成は次のとおりです。
- 作品紹介
- あらすじ
- 解釈
まずは、作品紹介から!
『鼻』は「宇治拾遺物語」・「今昔物語」が元になっている
『鼻』という作品は、「宇治拾遺物語」・「今昔物語」を素材にして作られたものです。
芥川龍之介の作品では、このように平安時代に書かれたものを出典とした作品が多いです。
ちなみに、芥川龍之介の『羅生門』も「今昔物語」が出典となっています。
夏目漱石は『鼻』を絶賛した!
夏目漱石は若い作家の育成に熱心であり、芥川龍之介の『鼻』を読んで絶賛したという話は有名です。
芥川龍之介は夏目漱石を慕っており、夏目漱石が病で亡くなったことは相当なショックだったと言います。
芥川龍之介は『鼻』も『羅生門』も学生時代に書いたものですが、『羅生門』の評価は低く『鼻』ばかりが注目されました。
今では、『鼻』よりも教科書に載っている『羅生門』を読んだことがある人の方が多いはずです。
続いて、『鼻』のあらすじに移ります。
芥川龍之介『鼻』あらすじ(簡単に)
『鼻』という小説を3行で紹介すると次のようになります。
- 鼻が長い僧侶はみんなから鼻を笑われるのがスゴく嫌だった
- 鼻を短くすることができたけど、今度は鼻が短くなったことを笑われて嫌だった
- ある日、朝目覚めると鼻が元通りの長さに戻っていて「これでみんなに笑われない」と喜んだ
話の筋はザっとこんな感じです。
内容をもう少し詳しく説明します。
『鼻』の内容(詳しく)
押さえておくべき『鼻』の登場人物は次のとおりです。
- 禅智内供(ぜんちないぐ):鼻の長い僧侶
- 弟子:鼻を短くする方法を知るキーパーソン
- モブキャラ:鼻を見てバカにする人たち
鼻の長さ:15~18cm
禅智内供のことをここでは僧侶と呼ぶことにします。
僧侶の鼻の長さがどれくらいかと言うと、5,6寸(15~18cm)と言われています。
※1寸は約3cm
顎の下までぶら下がっており、その鼻はソーセージに似ていたようです。
その長い鼻は日常生活に支障をきたすほどでした。
ここで、面白いエピソード(←失礼)を一つ紹介します。
長い鼻にまつわる面白エピソード
僧侶の鼻は、顎よりも長いため、なんと一人で食事をすることができません。
なので食事をする時は、弟子に鼻を持ち上げてもらっていたようです。笑
食べづらいし、持つ方もイヤですね。
現代なら間違いなくAIの仕事ですね。(←手術しなさい)
ある時、弟子ではなく召使いの少年が代わりに鼻持ち役に選ばれました。
その少年は僧侶が食事をしている途中でくしゃみをしたため熱いお粥(かゆ)に鼻をつっこんでしまったことがあったようです。
このウワサは(Twitterで拡散され)、瞬く間に京都中で広まったと言います。
しかし、鼻の長い僧侶にとって日常生活で不便をすることよりも遥かに嫌だったことがあります。
それは、みんなから(SNSで)悪口を言われることです。
※()の中は気にしないでくださいm(_ _)m
みんなからの(SNSでの)悪口が1番イヤ
中には、「あんな鼻で結婚できなかったから出家したんだろう」と言う人もいたようです。(ヒドイ)
これを言われるとかなり傷つきますね。
そんな僧侶は、鼻を短くするため、あるいは長い鼻を受け入れるために次のような行動をとりました。
- 鼻が短く見える角度を研究!
- 本の中から鼻の長い人を探す
- ネズミのオシッコを鼻に塗る
鏡の前で鼻が短く見える角度を研究
僧侶は、人がいない時に鏡に向かって鼻が短く見える角度を研究していたようです。
自分の顔が1番カッコよく(可愛く)見えるような角度を探す思春期の子どもみたいですね。笑
何度も練習したものの、実際より鼻が長く見えることはあっても短く見えるようにはなりませんでした。
本の中から鼻の長い人を探す
ある時は、本の中から自分と同じように鼻が長い人はいないかと探したようです。
しかし、耳が長い人はいても鼻が長い人は見つかりませんでした。
僧侶は他にも鼻が長い人を見つけて「あぁ、自分だけではなかったんだ」と自分を慰めたかったようです。
今では、ネットで検索すれば自分と同じ悩みを持つ人がすぐに見つかりますよね。
自分と同じコンプレックスを持つ人はいないかと探す僧侶は、まるで思春期の少年のようです。
ネズミのオシッコを鼻に塗る
また、ある時は烏瓜(薬草)を煎じて飲んだり、ネズミのオシッコを鼻に塗ったりしたようです。
効く可能性があるものは何でも試すという感じですね。
しかし、何をどうしても鼻が短くなることはありませんでした。
ところが、ある時、鼻を短くする画期的な方法が見つかりました!
その方法は、鼻をゆでて踏むというものです。笑
鼻を短くする方法:ゆでて踏む(笑)
この方法を弟子がある医者から聞いてきたものでした。
せっかく弟子が治療方法を教えてくれたのに、僧侶は次のように言いました。
「なんでそんな余計なことするの?いつ鼻を気にしているって言った?全然気にしてないんですけどーむしろ気に入っているし」
※こんな言い方していません
実際は
いつものように、鼻などは気にかけないと云う風をして、わざとその法もすぐにやって見ようとは云わずにいた。-芥川龍之介『羅生門・鼻』p.23より
でした。
つまり、「別に気にしてないしー」という感じですぐにその方法を試さなかったということです。
僧侶は弟子に「是非やりましょう!」と言って欲しかっただけ
僧侶は、その弟子が医者から聞いてきた方法を試すのが嫌だったワケではありません。
ただ、自分から「やりたいやりたい、やってやって」というのが気恥ずかしかっただけだったようです。
なので、弟子から「是非やりましょう!」と後押しされるのを待っていたと言います。笑
めんどくさっ!この僧侶めんどくさいぞ!
と弟子は陰口を言うことはなく、弟子の僧侶のこの性格を知っていたようです。
さすがですね。笑
あら不思議、本当に鼻が短くなっちゃった
- 鼻を茹でる
- 足で踏む
この2ステップで本当に鼻が短くなりました。
少し鷲鼻ぎみではありますが、常識の範囲内の長さでした。
鼻が短くなってすぐのうちは「時間がたつとまた長くなってしまうのではないか」と心配していました。
そのため、暇さえあれば自分の鼻に手をやって長くなってないか確認していたようです。
何度確認しても鼻が長くなる気配がなかったので、「やったー!これでみんなに笑われることはないだろう」と晴れやかな気持ちになりました。
しかし、実際は僧侶が思っていたようにはなりませんでした。
あれ?なんでみんな鼻を見て笑うの?
なんと、会う人会う人がみんな僧侶の鼻を見て笑うのです。
最初のうちは、短くなった鼻が見慣れなくて笑っていると思っていました。
しかし、以前長い鼻を見て笑っているのとは笑う様子が違っていることに気が付きまます。
ただ僧侶には、笑う様子が違っていることは分かってもなんで笑うのかが分かりませんでした。
みんなが笑っていた理由については、解説の時に説明します。
僧侶は短い鼻が嫌になる
僧侶は、だんだん不機嫌になり、他の人を意地悪く叱るようになってしまいました。
そして遂には、弟子にも陰口を言われるほどにまで嫌われる始末です。
僧侶は、喉から手が出るほどに欲しかった短い鼻がイヤになってしまいました。
朝起きると鼻が元の長さに戻っていた
僧侶は、ある寝苦しい夜に、鼻がむずがゆくなります。
鼻に手をあてると少し水気と熱っぽさがあり、むくんでいるように感じました。
その時は、無理矢理短くしたからその副作用が来たんだと考えます。
そして、朝目を覚ますと、忘れかけていた懐かしい感覚がありました。
さっと鼻へ手をやると、鼻の長さが元通りになっていることに気づきます。
それと同時に、鼻が短くなった時に感じたのと同様に晴れやかな気持ちになりました。
「やったー!これでみんなに笑われることはないだろう」
僧侶は、こう囁きました。-おしまい
以上が『鼻』の内容です。
続いて、解説に移りたいと思います。
芥川龍之介『鼻』解説
ここでは、次の3つの項目について解説していきます。
- みんなが短い鼻を笑った理由
- 最後は笑われなくなったの?
- 『鼻』で書きたかったこと!
まず、みんなが短い鼻を笑った理由について!
芥川龍之介『鼻』解説①みんなが短い鼻を笑った理由
まず、長い鼻を笑ったのは、シンプルに長くて変だったからですね。
では、なぜ短くなったのに笑っていたのか?
その理由は、人間は不幸を乗り越えた人にもう一度同じ不幸を与えたいと考える生き物だからです。
このことが書かれている『鼻』の一部を抜粋したものはこちらです。
人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。ところがその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥れて見たいような気さえなる。そうして何時の間にか、消極的にではあるが、或敵意をその人に対して抱く事になる。-芥川龍之介『羅生門・鼻』p.27より
簡単に言うと、人は2つの矛盾する感情を持っているということです。
- 他人の不幸に同情する気持ち
- 他人の不幸を楽しむ気持ち
例えば、友人が恋人と別れると「可哀想に・・・」と思うけど、後日「彼ピできたー」と言われると「早く別れてしまえ」と思うアレです。笑
脳科学者の中野信子さんの著書『シャーデンフロイデ~他人を引きずり下ろす快感~』(凄いタイトル)で分かりやすく書かれていますが、他人の不幸が密の味だと感じてしまうのは、脳の仕組み上仕方がないことだと言います。
芥川龍之介は『鼻』という作品で、人間の相反する感情を上手く描いています。
続いて、鼻が元通りになった後、笑われなくなったのかどうかについて!
芥川龍之介『鼻』解説②最後は笑われなくなったの?
これは、『鼻』の中(鼻の穴じゃないです)では書かれていないので想像するしかありません。
僕は、みんなは長い鼻を見て笑うと思います。
しかし、短い鼻を笑う時とは違う笑い方です。
長い鼻を見て笑う時と、短い鼻を見て笑う時では、みんなの笑い方が違うと書いてありました。
- 長い鼻:鼻長過ぎー、マジうけるー
- 短い鼻:長い鼻をからかわれるのが嫌だったんだ、超うけるんですけどー
なぜかJKっぽくなってしまいましたが、ニュアンスの違いが分かりますか?笑
長い鼻を見た時は純粋にその鼻が変で笑っていましたが、短い鼻では鼻を笑っていたワケではありませんでした。
短い鼻の時は、「それで笑われなくなるとでも思ったの?そんなワケないじゃん。何勝手に不幸から抜け出そうとしての。まぁうちらは認めないけどね」と僧侶を不幸のままであって欲しいという願いから笑っていたと考えられます。
それにしても、このJKたちはかなり怖いですね。笑
なので、鼻が元通りの長さに戻れば「鼻長過ぎー、マジうけるー」という以前鼻が長かった時と同じように笑われるのではないかと思います。
それか、前よりも悪化して「鼻短くしても笑われたから元に戻したの?超うけるんですけどー。そして、その鼻長すぎてマジうけるー」と2つ併せた笑いに悪化する可能性も否めませんね。
そして、芥川龍之介が『鼻』で書きたかったことについて!
芥川龍之介『鼻』解説③芥川龍之介が書きたかったことは?
『鼻』で書きたかったのは傍観者の利己主義だと思います。
僕は、これをイジメと訳しています。
先程引用した文章の続きをご覧ください。
内供が、理由を知らないながらも、何となく不快に思ったのは、池の尾の僧俗の態度に、この傍観者の利己主義をそれとなく感づいたからに外ならない。-芥川龍之介『羅生門・鼻』p.27より
内供は僧侶のことで、この僧侶はなんで鼻が短くなったのにみんなが笑っているのか分かりませんでいた。
しかし、「何かイヤな笑い方だな」と思っていたのは、無意識のうちに「傍観者の利己主義」(イジメようとする気持ち)に気づいていたからだと言います。
鼻が長いからと言って笑い、短くなったらそれはそれで笑う。
僕が『鼻』を読んだ感想は「完全にイジメと同じ構造」だと思いました。
イジメられる方に原因があるように見えて、イジメる側はただイジメたい(笑いたい)だけ。
まさに現代でいうイジメが『鼻』という作品で描かれています。
鏡の前で鼻が短く見える角度を探すのも、みんなにイジメられないように自分のコンプレックスをなんとかして隠せないかと模索する姿に重なります。
ただ、僧侶がイジメられて可哀想と思うのと同時に、長い鼻の面白エピソードのようなユーモアも感じられる作品だと思います。
芥川龍之介『鼻』のページ数:10ページ
『鼻』という作品は、なんとたったの10ページしかありません。
1ページ1分だとしても10分程で読めるので、是非読んでみてください。
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